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こんにちは。
今回は吸入薬に関してご説明したいと思います。
気管支喘息治療薬やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)治療に欠かせない吸入薬ですが、成分やデバイス(吸入器具)の異なるものが多く発売されています。患者さんに吸入薬の説明をさせていただくことがありますが、ご高齢の方の場合、吸入操作の習得に苦労されている方もお見かけします。
少しでも吸入薬への理解が深まり、今後の治療に役立てていただければと思います。
吸入薬それぞれの成分の効果
まずは、お薬の成分と効果についてご説明いたします。
吸入薬を使用されたことのある方ですと、吸入ステロイド、LABA(ラバ)、SABA(サバ)、LAMA(ラマ)などの言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
それぞれの成分は以下の4つに分類されます。
ICS:inhaled corticosteroid(吸入ステロイド薬)
喘息治療の第一選択薬です。強力な抗炎症効果があります。
LABA:long-acting β-agonists(長時間作用性β2刺激薬)
気管支平滑筋を弛緩させ、気道を広げるお薬です。効果が長時間続くため、発作の予防に用います。
SABA:short-acting β-agonists(短時間作用性β2刺激薬)
LABAよりも速やかに効果が現れるお薬です。喘息の発作時に使用します。
LAMA:long-acting muscarinic antagonist
(長時間作用性抗コリン薬)
COPD治療の第一選択薬です。気管支の収縮を抑え、気道を広げるお薬です。
ICS、LABA、LAMAはコントローラーといい、続けて使用することで発作を予防するお薬です。症状がなくても自己中断せず、毎日決まった時間に吸入するように心がけましょう。
症状によっては複数のお薬を併用して治療することもあります。使用する薬剤が多くなると、吸入が大変、吸入を忘れてしまう、デバイスの操作を覚えることが大変など、マイナス面も生じてきます。近年、複数のお薬が配合された合剤が続々と発売されており、より効率よく治療ができるようになりました。
吸入薬とデバイス
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ここでは当院で処方できる吸入薬をデバイスごとにいくつかご紹介いたします。
吸入薬には大きく分けて3種類の形体があり、お薬によってデバイス(吸入器具)が異なります。それぞれ特徴があり、人によっては向き不向きがあるかもしれません。
DPI:dry powder inhaler(ドライパウダー吸入器)
お薬は粉末状になります。息を吸うことでお薬が供給されるため、しっかりと深く吸入する必要がありますが、後述するpMDIのようにタイミングを合わせる必要はありません。
デバイス(吸入器具)の名称、特徴 | 製品、効果の紹介 | |
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ディスカス・キットのカバーを開け、 レバーをスライドされることで1回分のお薬が充填されます。 |
アドエア® (ICS+LABA) フルタイド® (ICS) |
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エリプタ・キットのカバーを開ける際に1回分のお薬が充填されます。 |
レルベア® (ICS+LABA) アノーロ® (LABA+LAMA) |
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ブリーズヘラー・カプセルタイプの吸入薬を1回分ずつセットします。・吸入後はカプセルに薬剤の粉末が残っていないことを確認しましょう。 ・正しく吸入できるとカラカラと音がします。 ・吸入容器は病院や薬局にて無料で配布されています。 定期的に交換するようにしましょう。 |
オンブレス® (LABA) ウルティブロ® (LABA+LAMA) |
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タービュヘイラー・半時計回りにまわし、さらにカチッと音がするまで時計回りに戻すことで1回分のお薬が充填されます。 ・キットを振るとカサカサと音がしますが、乾燥剤の音です。 残りの吸入回数はカウンターで確認してください。 ・初回は空打ちをする必要があります。 |
シムビコート® (ICS+LABA) パルミーコート® (ICS) |
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pMDI:pressurized metered-dose inhaler
(加圧式定量噴霧吸入器)
ボンベの底を押すと、1回分の吸入薬がエアゾール(霧状のガス)として噴霧されるタイプです。噴霧ガスとしてエタノールが使用されています。吸入する力が弱い方でも使用できますが、タイミングよく息を吸いながらボタンを押す必要があります。
デバイス(吸入器具)の名称 | 製品、効果の紹介 | |
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エアー・キャップを外してボタンを押すだけで吸入できます。 |
メプチン®(SABA) フルティフォーム®(ICS+LABA) アドエア®(ICS+LABA) |
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SMI:soft mist inhaler(ソフトミスト吸入器)
噴霧ボタンを押すと、1回分の吸入薬がエアゾールとして噴霧されるタイプです。pMDIとは違い、吸入ガスは使用しません。
デバイス(吸入器具)の名称 | 製品、効果の紹介 | |
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レスピマット・キットを半回転することで、1回分吸入できるようになります。・キットが硬いことがありますが、回転時に噴霧ボタンを押さないように 注意しましょう。 ・カートリッジをセットするタイプであり、初回は空打ちをする 必要があります。 |
スピリーバ®(LAMA) スピオルト®(LABA+LAMA) |
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いかがでしたか。みなさんが使用されているお薬もありましたか。
今回紹介させていただいた吸入薬はほんの一例ですが、LAMA単剤、ICSとLAMAの合剤など同じ効果のお薬でも、お薬によってデバイスが異なることがお分かりいただけましたか。喘息やCOPDの治療には毎日欠かさずに吸入薬を使用することが大切となります。
是非、自身に合う吸入薬を見つけてください。